まちの個性

都市の個性とはなにか―都市美とアーバンデザイン— 田村明著 181ページ

都市の個性とは、他の都市と異なる特性であり、その都市らしさである。その都市でなければもっていない独自性である。

 

このページに、まちの個性の情報などを載せます。

まちの個性とは、他のまちになくて、そのまちにしかない魅力のことです。

個性はまちをより魅力的にし、まちを活発にする力があります。

???
意味がわからないんだけど、どういうこと?

そうですね。わかりにくいと思いますので、横浜市を例にして説明します。

一つ、質問です。横浜らしい風景と聞かれて思い浮かべる風景はなんでしょうか?

横浜はミナトまちだから、例えば赤レンガ倉庫とかかな。

そうですね。ランドマークタワーや赤レンガ倉庫を思い浮かべる方も多いと思います。それらはミナトまちとしての横浜の個性を体現していますから。

もしも赤レンガ倉庫がなかったら、どんな感じがしますか?

 

えっ・・・
さみしい感じがする・・・。

実際、そうなる可能性もありました。昭和40年代当時、赤レンガ倉庫を取り壊して、コンテナ埠頭にする計画がもちあがっていました。経済的に考えた場合、そちらの方が合理的ですから。また当時は急速に都市化する東京にまきこまれる形で横浜市は次々と宅地開発されて、東京のベッドタウンとなりつつありました。

ここでもう一つ質問です。「歴史ある世界のミナトまち」と「東京のベッドタウン」だと、どちらの方が市民が横浜に愛着や誇りを持てるでしょうか?

 

そりゃ、歴史ある世界のミナトまちのほうでしょ!

そうですね。そういったこともあり、当時横浜市でまちづくりに取り組んでいた田村さん等が赤レンガ倉庫の保存のために働きかけ、取り壊しを阻止しました。(*8)

赤レンガ倉庫は横浜の歴史やミナトまちとしての個性を体現する場所ですから。

現在はご存知のように市民が憩うことができる場所となっていて、ミナトまちとしての横浜の個性を体現する場所となっています。

まちの個性は、まちに対する誇りや愛着の拠り所となります。

市民が自分のまちに対して誇りを持てると、それはそのまちの一員であり、そのまちに関わっている市民自身の誇りにつながります。

自分のまちに誇りを持てる個性があると、そのまちの子どもたちは、そこで生まれ育った自分自身に対しても誇りを持つことができます。

市民が自分のまちに対して愛着を持てると、それは市民が自分のまちを良くしようという気持ちにつながります。なのでまちの個性にはまちを活発にする力があります。

 

歴史について

 

都市の個性とはなにか―都市美とアーバンデザイン 田村明著 267ページ

歴史はそれぞれ個性的だから、歴史を語らせる都市はそれだけでも個性的である。歴史はもちろん過去のためにあるのではなく、現在の人々が、自分たちの都市の特性を知る手だてであり、時間という軸のなかでものを考えさせる糸口である。

まちの個性の情報を伝えるなかで、まちの歴史を紹介します。

歴史がまちの個性の全てではありませんが、多くの場合まちの歴史は、他のまちになくて自分のまちにしかない魅力や、市民がまちのどの点に誇りを抱いているのかをつかむヒントを提供してくれます。

横浜市には「ミナトまち」としての歴史と個性がありますが、市内のそれぞれのまちにもそれぞれの歴史があります。それぞれのまちが個性を磨くことで、横浜は個性豊かでより魅力的なまちとなる可能性があります。

まちの個性を磨くって、具体的になにをやるの?

それぞれのまちによっていろいろなやり方があると思います。例えば昔映画座や芝居小屋があり、有名な歌手を輩出した歴史を持つなど、芸能と縁のあるまちなら、サロンや自主事業のときに地域の若いパフォーマーや歌手を呼び、パフォーマーを育てることが、「芸能のまち」という個性を磨くことにつながるかもしれません。また、個性は一つのまちに一つとは限りません。一つのまちがたくさんの個性を持つ場合もあると思います。

まちづくりの実践 田村明著 岩波新書 1999年 より引用

「まちづくり」の観点から言うと、遺産はただの古いモノではなく、生きている「まち」のなかで使われることが必要だ。

まちを象徴するような古くからの場所や遺産をただ保管するのではなく、市民が日常的に利活用できる場所とすることも、まちの個性を磨くことにつながります。

ランドマークタワーのドッグヤードガーデンや赤レンガ倉庫はその考えに基づいて、市民が日常的に触れることができる場所となっています。(*9)(*10)それによって市民は横浜らしいミナトまちとしての個性に日常の中で触れ、愛着や誇りを自然な形で持つことができるようになっています。

もしもまちに市民が誇りを持つことができる歴史があり、それを示す古くからの場所があるとするならば、例えばみちあそびを行うことを企画したり、それが難しいとしても外で行うことができる簡単な自主事業などを企画することで、市民がまちに愛着を感じやすくなります。